SysMLツール Enterprise Architect

SysMLとは?

SysML (Systems Modeling Language)は、OMG (Object Management Group)によって策定されたシステムレベルの設計のためのモデリング言語です。UMLをベースとし、システムの設計に必要な図・要素・関係を追加し、不要な図・要素・接続を対象外としました。システムの構造的な設計だけでなく、動作(振る舞い)や要求も表現できます。システムの機能面での要求とその要求を実現する要素との関係や、ハードウェアの構成の表現なども考慮されています。

SysMLのバージョン1は、UMLを拡張し定義されました。UMLでは14種類の図(ダイアグラム)がありますが、SysMLではこのうちの7つの図のみを利用します。そして、システムの設計のために必要と考えられる2つの図を追加し、合計で9つの図が定義されています。UMLで定義されSysMLでも利用する7つの図についても、図の位置づけ・名称が変わっているものがあります。例えば、クラス図はブロック定義図に再定義されました。

SysMLにはバージョンがあり、現在はバージョン1.7が最新となります。SysML1.4以降は大きな変更はなく、細かい改善が中心です。次期バージョンとなるバージョン2.0の策定が進んでいます。

SysMLは、MBSE (Model Based Systems Engineering・モデルベースシステムズエンジニアリング)の実施に利用される記法として広く利用されています。

SysMLの図(ダイアグラム)

SysML 1.7の仕様で定義されている図は以下の9種類となります。

  • 要求を表現するための図
    • 要求図
  • 構造を表現するための図
    • パッケージ図
    • ブロック定義図
    • 内部ブロック図
  • 振る舞いを表現するための図
    • ユースケース図
    • アクティビティ図
    • ステートマシン図
    • シーケンス図
  • 制約を表現するための図
    • パラメトリック図

それぞれの図において利用できる要素と接続(関係)も、元となっているUMLの図に関係します。SysMLで新規に定義された要素と接続もあります。特に、SysMLではトレーサビリティに関係する接続が増えています。

なぜSysMLが必要か

システムの設計には、システムを設計するアーキテクトだけでなく、ハードウェア・ソフトウェアの両方のエンジニアも協調する必要があります。また、対象のシステムの利害関係者やプロジェクトを推進するマネージャーなども関係します。こうしたさまざまな関係者が対象のシステムを正しく理解するためには、誰もが誤解なく把握しやすい表現が必要です。

複雑な内容を理解するには、文章ではなく視覚的な図の方が適していることが多いです。しかし、図の書き方や意味が書く人・読む人によって異なってしまうと混乱の元となります。そのため、システムに関するさまざまな内容を表現する記法は、関係者全員で共通であり、また会社・組織に依存しない標準の表記方法であることが望ましいでしょう。これらの条件を満たすのがSysMLです。

さらに、システムを表現する図はさまざまな観点(ビュー)から作成され、多岐にわたります。複数の図間の関係・整合性や変更時の影響範囲が把握できることも必要です。こうした内容を実現するためには、SysMLツール(SysMLモデリングツール・SysML Modeling Tool)が必要となります。汎用的な作図ツールやPowerPointなどのOfficeツールでもSysMLの図を書くことはできるかもしれませんが、整合性や影響範囲の把握や、情報(モデル)の変更時に関係する部分の更新作業などを実現するためには、汎用的な作図ツールでは非効率的です。

Enterprise Architectを利用したSysMLのモデリング

Enterprise Architectのコーポレート版・ユニファイド版・アルティメット版のいずれかを利用すれば、SysML 1.5に対応したモデリングを行うことができます。Enterprise Architectでは、SysML 1.5で定義されている9つの全てのダイアグラムが利用できます。

概要は以下の動画をご覧ください。(10分34秒・音声あり)

モデリングツールとしての主な機能につきましては、Enterprise Architectの機能概要のページをご覧ください。

OpenModelicaやSimulinkと連携したシミュレーション

OpenModelicaやMATLAB/Simulinkと連携しブロック図・内部ブロック図・パラメトリック図で定義した内容を元にシミュレーションを実行できます。この機能を利用するには、ユニファイド版・アルティメット版のいずれかが必要です。

OpenModelicaやMATLAB/Simulinkと連携したシミュレーションを試す方法は、PDFドキュメント「SysML パラメトリック図のシミュレーション 機能ガイド」をご覧ください。

日本語版の独自の拡張について

SysMLについて、開発元(オーストラリア)とは別に、日本で独自の機能追加を行っています。この拡張には以下の内容が含まれます。

  • 要求の関係表をExcel形式で出力
  • 要求要素やポート要素・プロパティ要素などをダブルクリックした場合に、独自のプロパティ画面を表示
  • ブロック要素について、初期値で表示される区画の指定機能
  • ポート要素につながるコネクタの位置調整機能
  • その他、いくつかのモデル作成支援機能

これらの独自の機能追加は、Enterprise Architect 日本語版のインストーラに同梱され、自動的にインストールされます。Enterprise Architect 英語版には含まれません。

SysMLを利用する場合に役に立つ情報

SysMLツールを利用する際のモデリング方法は、基本的にはUMLと共通です。PDFドキュメント「ゼロからはじめるEnterprise Architect」や、「Enterprise Architect入門セミナー」で説明する操作方法が役に立ちます。

SysMLに固有の操作につきましては、PDFドキュメント「SysMLに関する操作方法について」をご活用下さい。また、動画「SysML 操作セミナー」もご覧ください。

必要システム構成

SysML 1.5を利用するには、コーポレート版・ユニファイド版・アルティメット版のいずれかが必要です。OpenModelicaと連携するシミュレーション機能は、ユニファイド版・アルティメット版のいずれかが必要です。

上記「日本語版の独自の拡張について」の内容を利用する場合には、Microsoft .NET Framework 4.7.2以降のランタイムが必要です。

評価について

SysMLツール(SysMLモデリングツール)の機能を評価したい場合には、評価版の起動時に表示されるエディションの選択画面で、プロフェッショナル版以外を選択して下さい。

上記の「日本語版の独自の拡張」は、日本語評価版にのみ含まれます。